開発者インタビュー

開発スタジオ
Arachnid Games
設立年
2013年
所在地
米国カリフォルニア州バークリー
社員数
3
リリースタイトル数
1
Unity 使用歴
1年半
開発者
Leo Dasso (Arachnid Games)Leo
質問者
ザック・ハントリ (架け橋ゲームズ)ザック
翻訳者
矢澤竜太 (架け橋ゲームズ)

第一回目となる開発者インタビューでは、「ぼくのかんがえた さいきょうの うちゅうせん」体験が楽しめる『Ballpoint Universe Infinite』の開発者に突撃します。ボールペンで描かれた落書きが特徴的な本作ですが、Dasso氏はそのアートをすべて一人で描き上げた人物です。

開発スタジオの生い立ち

ザックでは早速。本作、そして開発スタジオの生い立ちについて聞かせてくれる?最初はどんな風だったの?

LeoArachnidを立ち上げたのは僕とジェイコブで、当時はまだ二人とも大学生だったんだ。ジェイコブが技術担当、僕がアートとアニメーション担当だった。『Ballpoint』はほぼ、サンフランシスコの四畳半(7.4平方メートル)しかないオフィスにこもって二人で開発したゲームなんだ。今は拠点をバークリーに移してるし、人も2人増えたけどね。UI担当のパトリックと、それから総務的なことをこなしてくれるインターンのアルバイトさん。ゲーム作り以外の仕事を忘れがちな僕らにはとても大切な役割だよ(笑)。

ザック面白いね。インディー開発者がこんなに早い段階から総務的な人を雇うのって珍しいと思う。

Leoそうだと思う。僕らの場合はゲーム作ることに集中しすぎてるせいで、そういう人がいないとやんなくちゃいけないことを忘れちゃうんだよね。

ザックそういえば『Ballpoint』は、2人が大学にいた時に始まったんだよね?完成までにどれくらい時間がかかったの?

Leo確かに大学生時代に立ち上げたプロジェクトだったけど、学校の課題じゃあなかったんだ。個人的に立ち上げたというか。最初から最後までだと1年半かかったかな。最初期なんかは作業する場所もなかったから学校のPCで作業してたんだよ。そこから、ゲームの方向性が固まっていったんだ。でも当時は開発する時間がなくてね。二人ともアルバイトがあったし、ジェイコブはGoogleでインターンしてたし。

ザック大学はどこだったの?

Leoサンフランシスコの Academy of Art だよ。

ザックおお、いいねー。昔の同僚が何人も、副業としてあそこで教えてたよ。

Leo実は、僕も今母校で教員やってるんだ。たまたま習ってた先生と雑談してる時に、そういえば教職に空きがあるんだけど、って言われて。「いいね、やろっかな」って。ちょっと面白いのは、生徒がほぼ全員僕より年上だってトコかな。

ザックUnityは大学時代入る前から使ってたの?それとも大学で使い方を覚えた?

LeoUnityについてはジェイコブから教えてもらったんだ。『Ballpoint Universe』のアイデアをジェイコブに話した時、これFlashでできるかなって聞いたんだけどさ、ジェイコブの反応は「ンン…ムリ」って感じで(笑)。それで、実はUnityっていうのがあって…って話になったのが始まりだったかな。

落書きからインスピレーションを受ける

ザック『Ballpoint Universe』のインスピレーションの元になったものって何かある?

Leoアイデアがひらめいたのは、授業中のことだったんだ。当時は、アートにこだわりすぎるせいで課題が完成できないのにイライラしてた。で、ある日落書きしてる時に、これをスキャンして使えば塗りも仕上げもいらないじゃん!って思いついた。それで、コレを本当にやるならどんなゲームにすべきかなって考え始めて。実際にやろうと思った大きな理由の一つは、もともと自分のノートには山ほど落書きがあったからなんだ。そういう落書きを見返しているうちに、「スタイルが同じだから、ビジュアル的にはこれ全部同じゲーム中で使えるな」って思って。

ザック独特のアートワークが特徴的なゲームだけど、そのせいで困ったことなんかはなかったの?

Leo実はアートについては全然問題なかったよ。全部すんなり進んだって言えると思う。

ザックなるほど…。Unity使ってるからアートスタイルがどうあれやることは同じって感じかな。

Leoそうそう。アート周りで一番困った事って言ったら、周りの知人に話した時にダメなアイデアっぽいと思われる事だったかな(笑)。友達に話すと、みんな「どうだろうなー…うまく行かなそう」って言うんだもん。あ、あとはアレかな。落書きを使うっていうコンセプトの性質上、色を全然考えなくなっちゃうから、どうやって自然に色を追加するかはけっこう考えたと思う(※本作ではキャラクターに色は塗られておらず、代わりに背景やライティングなどが色を補っている)。

ザック普通は落書きっていうと平面だと思うんだけど、本作ではレイヤーを使ってすごく上手に奥行きが出ているよね。あれのおかげで世界がすごく活き活きとして見えるようになってると思う。

Leoありがとう。僕らはレベル作るとき、ジオラマを作るようなつもりで製作してたんだ。あ、あと、開発の途中では3Dメッシュで作ったアイスキャンディーを追加して、背景とか世界観をテコ入れする案もあったんだよ。

ザックそういえば『Ballpoint Universe』を開発している時って、他の2.5Dゲームを調査したりした?

Leoしたよー。Gamecubeの『ペーパーマリオ』は僕が一番好きなゲームだから、間違いなく影響を受けてる。

他のゲームとは全く違ったシューティングのゲームメカニクス

ザックそれからアート以外にも、シューティングパートのゲームメカニクスもすごくユニークだよね。これについても何か影響を受けたゲームとかあるの?それから、この部分を一般的なシューティングゲームと同じにしなかったのは何でなんだろう?

Leo実は、『アインハンダー』からすごく大きな影響を受けたんだ。あのゲームはすごく興味深い。シューティングジャンルの他のゲームとは全然違うアプローチを取ってるよね。武器を切り替えること、それから剣を使えること。飛行機が剣を装備するとかスゲーかっこいいと思った。あそこからアイデアをもらったんだと思うな。2011年の App Store には「よく出来ているけど目新しくはないシューティングゲーム」が山のように存在してた。そして、僕らはそういうタイトルと競合したくなかった。そういうゲームを作っている人はシューティングゲームを作るための優れたスキルを持ってるって分かっていたから。だから僕らだけの差別化要因を模索していって、剣と盾っていうのはゲームメカニクスを大きく変えてくれるだろうって思い至ったんだ。

ザック今年の Bit Summit で僕らが展示した時も、たくさんの日本人ゲーマーが近接武器を気に入っていたよ。レオのお気に入り武器は何?

Leo実はリボルバーが大好きなんだ。狙いを定めて大ダメージってのが好きで。でもジェイコブも含めて、スピア好きがすごく多いんだよね。どういうわけか。

ザック日本人ゲーマーが近接武器を気に入ったって話は驚いた?それとも国問わずみんなそうなのかな?

Leo日本人ゲーマーが気に入ってくれたことには驚かないかな。個人的に、日本文化は剣や格闘技と強く結びついてると思ってるんだ。銃じゃなくってね。欧米だとFPSやアサルトライフルをものすごく強く支持する層が多いわけだけれど、銃に入れ込んでいないマーケットもあるんだって聞くのはとても新鮮だなあ。

ザック日本文化といえば…話を聞いていると日本のゲームが好きそうな感じがするけれど。お気に入りの日本製ゲームをいくつか教えてくれない?

Leo実は『ファイナルファンタジー』シリーズの大ファンなんだ。基本的に初代から13までほぼ全部遊び通したよ。

ザックそうなんだ…!最近の『ファイナルファンタジー』は好き?特に13は、欧米のゲーマーからは否定的な意見が多かったみたいだけど。

Leoそうだね、ゲームプレイ的に同じことの繰り返しっていうのはあったと思う。でもゲームのスケールの大きさはいいなって思ったし、音楽は最高だったね。それに同じことの繰り返しって言ったけど、結局最後まで遊んでるんだよね。ストーリーが気になっちゃって。

ザックシリーズで一番好きなのはどれ?

Leo『ファイナルファンタジーⅩ』。恋愛系大好きだから。ホントの話、『ファイナルファンタジーⅩ』はプレイするたびに泣いちゃう(笑)。もうね、しょうがない。本当に、感情を揺さぶるゲームなんだよね。

ザックストーリーといえば、『Ballpoint Universe』のストーリーで聞きたいことがあったんだ。あれはどういう意図を込めて作ったストーリーだったの?たとえば、届けたいメッセージがあったとか?

Leo実は、『Ballpoint Universe』のストーリーって完全に後付けだったんだよね。開発初期段階でも、落書きが直面する衝突や対立は何だろう?それを軸にしてストーリーを展開しよう!とか考えていたんだけど、ある日ランチを食べながら話してる時に、落書きにはそんな筋道立てた考え方しないぞ、って思い至って。それで今みたいな設定になったんだ。論理立てて物事を考え組織的に動くなんて、非落書き的。だから落書きにとっては敵でしょ。<論理信奉者>はそうやって生まれた。でもキャラクターとかストーリー構成とか手付かずで。ゲームのそれ以外の部分を作るのに手一杯でね。そうして開発開始から8ヶ月経ったところで「やべえ、これどうやって終わらせりゃいいかワカンネ」ってなってさ。だからいわゆるインディー的な「あやふやな」エンディングにしたんだ。本当に正直に言うと、今振り返ればもっと良く出来たかもしれないって思う。でもあの時はひたすらにゲームを完成させなくちゃいけなかったから…。
でも面白かったよ。Rock, Paper Shotgun[1]で記事を書いてもらえたんだけどさ、記事ではストーリーの本当に深いテーマとか隠された意味とかまで考察してくれてたんだもん。とあるフォーラム[2]でも、そういうストーリーの深い意味についてスレがもんのすごく伸びてて、みんなストーリーとかゲームについて白熱した議論をしてたり。だからある日スレに書き込んだんだ。「えっと、このゲームの作者だけど、作ってる時はそんな深いことこれっぽっちも考えてなかったよ」ってね(笑)。

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